- 概要
- スクラム以前にそもそもチームが目指すものは何か?
- 計画通りに進めることの限界
- 初期にすべてを計画し、複雑系をコントロールすることは難しい
- 仮説、検証のフィードバックループと適応によって複雑性をコントロールしようとしている
- スクラムではフィードバックループを回すことで、経験を積み、改善を続けることによってビジネス価値を高めている
概要
こちらはGLOBIS Advent Calendar 2020の23日目の記事です。スクラムの記事を読んでるときに、自分自身で大切にしている核の考え方を書いてみます
スクラム以前にそもそもチームが目指すものは何か?
ビジネス価値の最大化(ROIの最大化)
- 顧客にとって価値のあるもの(ビジネス価値)を最大化するために、チーム全体で作業をビジネス価値に転換していくこと
ビジネス価値
- 顧客にとって価値のあるもの
- 顧客に見える(顧客とやり取りするオペレーション、顧客が触れるシステムそのもの等)や顧客に見えない(社内のワークフローや分析等)
- 顧客にとっての価値をどう計測するのか?
- マーケティング的観点
- NPS, LTV等
- システム的観点
- アクティブユーザー数、レスポンスタイム等
- マーケティング的観点
計画通りに進めることの限界
「人々」「要求」「技術」から生じるノイズ(カオスや複雑性)が原因で計画を立てて実行することが難しい
また、当時はMitchell M. Waldropの『Complexity: The Emerging Science at the Edge of Order and Chaos』(邦訳:『複雑系』)が流行し、複雑系やカオス理論に対する関心が高まっていた。ものすごく噛み砕いて言えば、先のことなんかよくわからん!(計画なんて無理じゃね?)という感じ。
プロジェクトの初期は、不確実性が高く見積もりにブレが出やすい。またプロジェクト初期に、すべての情報を出すことは現実的ではない
初期にすべてを計画し、複雑系をコントロールすることは難しい
ではスクラムは複雑系をどうやってコントロールするか?
- 事前に予測・定義することは諦めている
- その代わりに以下2つを採用している
- 試行錯誤しながらプロセスを制御していくこと(経験主義)
- ムダを排除していくこと(リーン思考)
- ※ 作業のサイズを小さくし、リリースまでの全プロセス(計画、実装、テストなど)を経験することによって学びの機会を増やしている
仮説、検証のフィードバックループと適応によって複雑性をコントロールしようとしている
そもそも経験を得るためには何が必要なのか?
- 経験を得るためには以下の流れが必要
- 実行する → フィードバックを得る → 学びを得る → 経験として蓄積する
- スクラムイベントをただこなしているだけでは、スクラムでは無いと言われるのは、実行するというフェーズに留まってしまっているから
フィードバックを得るために必要なことは何か?
プロセスの場合
- 以下の3つのステップが必要
- 計画
- 実行
- 振り返り
- 到達地点を決め(計画)、実行し、実行結果にどんな差分があったかを振り返ることで初めてフィードバックを得ることができる
- ※ 計画をせず、フィードバック得ようとする場合は、何が要因で結果が起こったのかの分析が困難になる為、難易度が高くなる
- そして得られたフィードバックをプロセスに適用することによって得たフィードバックがプロセスに蓄積される(経験値となる)
インクリメントの場合
- 成果物がないと正しくレビューすることができない。また成果物を見て、触ってみて初めてわかることもある
スクラムイベントでフィードバックを得ている箇所
- スクラムでは、仮説、検証のフィードバックループによってプロセスの制御(経験主義)や、ムダを排除している(リーン思考)
- プロセス、スプリントによって生み出される成果物(インクリメント)を上記、スクラムイベントで検査している
フィードバックループの全体像
- 引用:© VersionOne
スクラムではフィードバックループを回すことで、経験を積み、改善を続けることによってビジネス価値を高めている
では、スクラムで定義されている役割の人たちは何をすればいいのか?
- プロダクトオーナー
- ROIの最大化
- ビジネス価値を高めるために、何のリソース(時間、人、金等々)をどうするか?を考える必要がある
- ROIの最大化
- スクラムマスター
- プロセスに対するフィードバックループがうまく回るようにチームに対してコーチング
- メンバー
- スプリントゴールに向けて毎日計画を適応させる(プロセスに問題ないかのチェックや改善)
- ステークホルダー
- プロダクトに対するフィードバックの提供
まとめ
- フィードバックループを回すことに注力する
- フィードバックループの回数がたくさん回るように工夫する
- フィードバックループを回すことだけに注力せず、スプリントによってビジネス価値が高まるか?を意識する
- プロダクト(インクリメント)に対するフィードバック、プロセスに対するフィードバックを意識する